ミライにつながる建設情報コラム

2026.09.14

プロジェクトストーリー|札幌柏葉会病院

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第74回 日建設計 優秀工事に選定
難工事を誇りに変えた
札幌柏葉会病院新築工事、その舞台裏

建設会社の施工力は、完成した建物の姿だけで測れるものではありません。

設計者の意図を正確に形にする技術力。厳しい工程や予期せぬ課題に対応する現場力。そして、発注者や設計監理者と同じ目線で建物の価値を追求する姿勢。そのすべてがそろって初めて、「優れた施工」が実現します。

このたび、伊藤組土建が施工した札幌柏葉会病院が、株式会社日建設計主催の「第74回 日建設計優秀工事 感謝の会」において優秀工事に選出され、作業所長に感謝状が贈られました。
発注者や設計監理者の期待に応え、病院が目指す医療環境の実現に向けて、高い品質を追求してきた本工事。今回の選定は、現場に携わった一人ひとりの仕事が評価されたものであり、伊藤組土建が大切にしてきたものづくりの姿勢が認められた結果でもあります。



【日建設計 優秀工事 感謝の会とは】
日建設計が設計・監理を手掛けたプロジェクトの中から、品質・工費・工期・安全の各面において他の模範となる施工管理が行われ、かつ出来栄えが特に優れた工事を選定し、担当した作業所長に感謝の意を表する会です。1953年から続く歴史ある会で、建設業界でも名誉ある評価として広く知られています。


第1章 
次々と立ちはだかる難題。それでも現場は止まらなかった

札幌柏葉会病院の新築工事は、札幌市豊平区の再開発エリア「札幌リードタウン平岸ベース」における最終区画の工事として行われました。周辺の住宅や商業施設では、すでに人々の生活や営業が始まっており、工事は地域の日常と隣り合わせで進めなければなりません。搬入車両の時間を制限し、騒音や振動、粉塵、臭気への対策を徹底するなど、近隣環境への配慮も現場に課せられた重要な使命でした。

建物そのものも、高い施工精度が求められる工事でした。
1階の外壁には、全面に杉小幅板型枠を用いた打放しコンクリートを採用。打設範囲や打継ぎ位置、止水方法を綿密に検討し、5回に分けてコンクリートを打設しました。型枠を外した後の表面がそのまま仕上がりとなるため、わずかな施工の乱れも外観の品質に影響します。
作業所長として工事を指揮した原田英一(以後、原田所長)は、打設のたびに現場に立ち、自ら壁を叩きながら施工状況を確認し続けたといいます。

さらに、2階は階高が5.3メートル、3階からは外壁が円弧状に変化するとともに、柱の位置も変わる複雑な構造でした。全面に支保工とステージ足場を設置し、構造設計者と納まりや配筋方法について協議を重ねながら施工していきました。
病院特有の放射線防護工事や、多数の医療設備との調整も並行して進みます。建築、構造、設備の各分野にまたがる課題を整理し、関係者の意見を施工へ反映するため、高い専門性と調整力が欠かせませんでした。

その難易度に加え、工事は社会情勢の影響も大きく受けました。人手不足による工程の遅れ、資材価格の高騰、工事途中でのデザイン変更、海外から調達する床材の納期など、計画を揺るがす難題が次々と発生します。
それでも現場は、その都度工程を見直しながら前へ進みました。モデルルームを先行施工し、施主、設計監理者、施工者が完成イメージを共有しながら品質を確認。その積み重ねが、高い完成度につながっていきました。

営業本部長の沓澤和重(以後、沓澤本部長)は、本工事について次のように振り返ります。
「要求水準は極めて高かったが、病院建築で培ってきた当社のノウハウを生かせる、やりがいのある案件でした」
そして、数々の課題を乗り越えられたことこそが、伊藤組土建の施工力の証明だったと語ります。

第2章 
難工事を支えた、建築部の判断

この工事の厳しさを、現場だけが感じていたわけではありません。

工事の概要を知った段階から、建築本部 建築部長の富本 憲幸(以後、富本部長)は「これはハイレベルな工事だ」と感じていました。複雑な建物形状、厳しい工期、事業条件。さらに、日建設計による厳格な監理のもと、高い要求に応え続けなければならない。現場の職員には、技術面だけでなく、どのような課題を前にしても折れることのない、精神的な強さも必要になるだろうと予想されました。

実際、施工状況は常に緊張感のあるものでした。
富本部長は何度も現場へ足を運びましたが、「もう大丈夫だ」と安心できるようになったのは、竣工のおよそ1か月前になってからだったといいます。

中でも建築部が危機感を持ったのが、現場職員の負担でした。
数々の書類や検査に多くの時間と労力を要している状況を見た富本部長はじめ建築部の上層部は、当初7~8人だった施工管理者の大幅な増員を決定。速やかに施工管理体制を見直し、業務負担の分散を図りました。

工事をやり遂げるために必要なのは、現場の努力だけではありません。状況を見極め、必要な人員を投入し、現場が力を発揮できる環境を整える。建築部もまた、工事の進捗に目を配りながら現場を支え続けました。

「これだけ難易度の高い工事を、みんなで力を合わせて工期内に完成させることができた。発注者の要望に応え、品質も、満足度も、信頼関係も、良いかたちで終えることができた。それが何よりだと思います」

厳しい状況に直面したとき、一部の誰かに背負わせるのではなく、組織として支え、最後までやり抜く。その総合力もまた、この工事を支えた施工力の一つでした。

第3章 
「私がやった方が早い」それでも任せた理由

原田所長には、現場を率いるうえで大切にしていた考えがありました。

難しい工事ほど、現場では日々新たな課題が生まれます。工程の調整、施工方法の検討、協力会社との連携。その一つひとつに、現場は自ら答えを見つけていかなければなりません。

「私がやった方が早いんです。でも、自分が全部やってしまうと、みんなは言われたとおりに動くだけになってしまう。それでは仕事の面白さもなくなるし、人も育ちません」

目の前の問題を早く解決するだけなら、経験豊富な所長が判断し、指示を出す方が効率的です。それでも原田所長は、可能な限り担当者自身に考えさせ、判断を任せました。
自分で考え、責任を持って行動する経験が、技術者としての成長につながる。その経験を重ねることで、将来、どのような現場でも力を発揮できる技術者に育つと考えていたからです。

その想いは、次第に作業所全体へ浸透していきました。
「必ず工期内に完成させる」
その目標に向かって、誰一人として弱音を吐くことなく、それぞれが自分の役割を果たしました。 原田所長は、その姿こそが伊藤組土建の社是である「責任観念」「誠心誠意」を体現していたと振り返ります。

2023年5月
2023年8月
2023年11月
2024年3月
2024年5月
2024年8月

第4章 
その姿は、会社の誇りだった ―― 社長が見た挑戦する現場 ――

現場の空気は、会社のトップにも伝わっていました。

工事期間中、現場を訪れた社長の大谷正則(以後、大谷社長)は、若手社員に何気なく声を掛けました。「仕事、楽しい?」
返ってきたのは、迷いのない「はい」という答えでした。

工程は厳しく、技術的にも決して容易な現場ではありません。それでも若手社員が笑顔で仕事を語る姿は、大谷社長の心に強く残りました。
「どんな仕事でも、やり遂げれば必ず自分の成長につながります。そして、その経験の積み重ねが、やがて社会からの評価につながっていきます」

大谷社長は、若いうちから難しい仕事に向き合い、多くの経験を積んでほしいと考えています。現場で直面した試練も、自ら考えて乗り越えた経験も、その後の技術者人生を支える力になるからです。
失敗を恐れずに挑み、建設という仕事の面白さを感じながら成長してほしい。その想いは、社員の力を信じ、挑戦の機会を与える伊藤組土建の社風に息づいています。

今回、日建設計の優秀工事として選定されたことについて、大谷社長は次のように語ります。
「何より誇りに思うことは、社員と協力会社の仕事に対する姿勢と技術力がトップレベルと認められたことです」
完成した建物だけでなく、そこに至るまでの社員たちの姿勢も評価されたことは、難工事に挑む社員たちを見守り続けた大谷社長にとって特別な意義のあることでした。

作業所で工事の説明を聞く大谷社長(左)
現場にて。原田所長(左)と大谷社長(中央)

第5章 
挑戦が、次の信頼を築く ―― 営業本部長が見た、伊藤組土建らしい仕事 ――

沓澤本部長にとって、本工事は伊藤組土建の技術力と仕事への姿勢をあらためて示すプロジェクトとなりました。

「施主様と設計監理者が求める水準は高く、資材価格の上昇や人手不足など、工事を取り巻く環境も厳しいものでした。それでも挑戦を決めたのは、当社がこれまで病院建築で積み重ねてきた経験に自信があったからです」

工事が始まると、現場の職員は高度な施工技術を発揮するだけでなく、施主や病院スタッフが新病院に寄せる思いを真摯に受け止めながら、より良い完成形を目指して、関係者と共に工事を推進していきました。沓澤本部長は、その姿に「伊藤組土建らしい仕事」を感じたといいます。

「どんな困難な場面でも、挑戦を続けていけば必ず道は開ける。そのことを、この現場が証明してくれました」

工事を通じて築かれた信頼は、一つの建物の完成だけで終わるものではありません。難しい要求に正面から向き合い、最後まで誠実に仕事を遂行した実績は、これからの信頼にもつながっていきます。

「札幌の医療施設を代表する本プロジェクトで、このような評価をいただけたことは、私たちにとって大きな励みです。これに満足することなく、さらに高いレベルの仕事を目指していきたい」

最終章 
受け継がれる施工力

表彰の知らせを聞いたとき、原田所長が最初に思い浮かべたのは、ともに現場を完成させた職員たちの姿でした。

「みんなのおかげでいただけた賞です」

難しい工事でした。
だからこそ、得られたものも大きかったと言います。
現場をともにした若手社員へ、原田所長はこんな言葉を贈ります。
「この現場を経験したのだから、これからどんな現場でも大丈夫。ここまで難しい工事は、そうそうありません。この経験を自信にして頑張ってほしい」

そして、今回の工事で最も誇りに感じていることについて、静かに語りました。
「どんなに難しい建物でも、みんなで考えれば、良い建物をつくることができる。作業所の職員の優秀さを、あらためて誇りに思います」

その思いは、本社から現場を見守った富本部長にも共通しています。
富本部長は、今回の工事を通じて、職員一人ひとりが技術者として成長したことにも大きな意味を感じています。

大谷社長もまた、課題を前にした現場の姿勢を高く評価しています。
「さまざまな課題に対しても否定することなく前向きに対応し、『必ずできる』という気概が現場全体に表れていました。その姿勢が今回の評価につながったのだと思います」

設計意図を読み取り、発注者の期待に応え、職員と協力会社がそれぞれの責任を果たす。そして、現場だけに任せるのではなく、必要なときには組織全体で支える。

札幌柏葉会病院の新築工事では、伊藤組土建が長年培ってきた技術と仕事への姿勢が、一つの建物として形になりました。
今回のプロジェクトによって得られたのは、感謝状だけではありません。難しい工事をやり遂げた自信と、そこで磨かれた一人ひとりの技術です。
札幌柏葉会病院で培われた経験はこれから、技術者から技術者へ、現場から現場へと受け継がれ、伊藤組土建の施工力をさらに高めていきます。

感謝の会で日建設計 大松社長から感謝状を受け取る原田所長(右)
感謝の会を終えて。左から大谷社長、原田所長、沓澤本部長

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